地エネの湯 開設にあたって

  特集:インタビュー「地エネの湯ウェブサイト開設にあたって」

2017年4月26日、地域エネルギーを利用した入浴施設に特化した温泉・銭湯紹介サイト、「地エネの湯」がオープンした。製作を手がけた任意団体 地エネの湯・大久保芳洋氏にその想いを語ってもらった。

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-なんで今、地域エネルギーの温泉サイトができたんですか?
「なんで今?」という意味では、これまで無かったのがおかしいぐらいで、もっと早くから必要なものだったと思っています。その理由は後ほどご説明しますね。
私自身がほしいと思った情報がまとまったウェブサイトが、これまで見つからなかった。だから無謀にも、作ってしまうことにした、それだけのことです。
まだまだ作りかけに過ぎませんので申し訳ないです。他にもっといい情報源があったら教えて下さい(笑)

-大久保さん自身のことについて教えて下さい。
みなさん私のことをかなりの銭湯マニア、温泉マニアと思われるようですが、全然そんなことはありません。むしろ全くの初心者でありながら、このような団体を立ち上げている事が恐縮です。
私はただの会社員ですが、日頃から大きなお風呂が好きで近所の銭湯によく行きます。また学生時代からアウトドアや農林業ボランティアが趣味で、休みの度に出掛けた先で遊んだ後、日帰り入浴施設で疲れを癒すのが欠かせません。そういった生活を送る中で、いつしか大切なことに気づいていました。これが現在につながっています。

-「地エネの湯」が生まれるきっかけとなった、2つの気づきとは?
1つ目は、山里で気づいたこと。ここ数年か5~6年の間、林業の盛んな山里の入浴施設では、従来の石油ボイラーに代えて、薪やチップなどの地元の木材を燃料としたボイラーが導入されている所が増えてきていると。しかも、そのボイラーは二次燃焼を行う最新式で、木材を余すことなく熱に変換するとても効率のよいものです。この意味を考えてみてください。
…従来、石油を購入していたお金が、地元の木材に流れ、地元の仕事が少しよみがえる。従来、石油を燃やしてCO2を排出していたのが、木質バイオマスに代わることでカーボンニュートラルとなり、温暖化防止に少しつながる。入浴施設にとっては、原油価格に左右されない地産池消の燃料となり、より安定経営、地域密着経営、うまくいけばコストダウンもできる…。
こんな、三方良しのシステムと思いきや、それぞれ苦労されリスクを受け入れた上で、各地で動きだしているとなると、心から応援したいと思うようになりました。

さぎり荘(福島県鮫川村)では、浴場に向かう途中で薪とボイラーをガラス越しに望むつくりになっている。
さぎり荘(福島県鮫川村)では、浴場に向かう途中で薪とボイラーをガラス越しに望むつくりになっている。

2つ目は、町で気づいたこと。ここで町に目を向けると、昔ながらの銭湯では今でもけっこう、「薪」が燃料として使われています。これはバイオマスとか再生可能エネルギーとかいう言葉が出てくるもっともっと前から、私たち日本人が昔から当たり前のように続けてきた、地域エネルギー利用の代表例といえます。もちろんそれだけではなくて、銭湯の魅力は文化そのもの、歴史そのものであり、とても味わい深い。
しかし今、昔ながらの銭湯がすごいスピードで減少しているという事実に気づきました。これは余りにも惜しいことです。何とか銭湯が少しでも元気になってほしい、なくならないでほしい、心から応援したいと思うようになりました。
同じように銭湯を応援する様々な活動が動きだしている中で、自分は地域エネルギー利用の観点から銭湯を応援できるのではないかと思い至りました。薪に限らず、ヒートポンプ、太陽熱などさまざまな省エネ・再エネの工夫をしている銭湯があるんですよ、知っていましたか。
鶴の湯(東京都世田谷区)は、当ウェブサイトに掲載するも間もなく、閉店となってしまった。
鶴の湯(東京都世田谷区)は、当ウェブサイトに掲載するも間もなく、閉店となってしまった。

これらの2つの気づきが重なって、そしてそれぞれが今まさに大きく動きだしていて、私自身も動かずにはいられなかった。こうして生まれたのが「地エネの湯」です。

-応援したいということですが、それはどのように?
すみません、応援という言い方は少しおこがましいかもしれません。ファンとか愛好会とか言うほうが良いかもしれません、要するに好きなんです。
自分はまず地域エネルギーを活用している入浴施設を選んで入ることにしました。すると、いざ入ろうと思って都合よくそのような入浴施設に出会うのも難しいし、情報源が散在している。そんな時に役に立つように「地エネの湯」ウェブサイトを作っています。
自分と同じように、地域エネルギーの観点から入浴施設を選ぶ人のために。エコカーや省エネ家電が選ばれるように、地産池消やサステナブルが選ばれるように、「地エネの湯」を選んで入ってくれる人が少しでも増えたら、応援するということになるのではと思っています。
 
 
-今後の目標を教えて下さい。
まだまだウェブサイトとして役に立つレベルになっていないので、情報面でも機能面でもレベルアップが急務です。しかし慌てて情報量を増やすことはしたくありません。志を共にする仲間を募り、分担して楽しみながらコンテンツの充実を図っていけるとベストです。そこで今回、ウェブサイト開設に合わせて「特集記事」の掲載を開始しました。ここでは「地エネの湯」に関わる人々の想いが伝わり、表情が伝わり、熱量が感じられる記事をつくることを目指します。こうした想いが誰かに伝わり、仲間が増えていくことを楽しみにしています。「地エネの湯 応援隊」メンバー募集中です!
目標ですか。現段階で口にするのは途方もないことですが、決まっています。日本を変え、世界を変えることです。多くは語りませんが、そういった事を見据えて現在の活動をしています。
いや、そんな大口はともかく、このウェブサイトの記事を読んでいただいた方へ、温かさを届け続けることが目標です。私をいつも温かく迎えてくれるお湯に敬意を表して。

 
 

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大久保芳洋(おおくぼ よしひろ)

1984年新潟生まれ、オランダ育ち、現在は千葉県在住。趣味は登山、自転車、棚田保全や林業のボランティアなど。会社勤めの傍ら「地エネの湯」を立ち上げた。関東周辺エリアの日帰り入浴施設と、千葉県の銭湯を担当。レトロ銭湯ファン、アウトドアファンの目線でレポートします。